君の心に太陽の花を
~我が友、川人昭夫先生に捧げる~

坂野栄一
君のタクトを見つめる
若人の輝く瞳
タクトが振り下ろされると
遠いギリシャの紺碧の空から
詩神ミューズの女神たちが舞い下りる。
徳島の文化の伝統は
美しい調べに満ち
若人の豊かな心は
愛と平和の幸福に包まれる

僕たちは 忘れないだろう 決して
若い背広姿の君が
初めてベートーヴェンの「運命」を指揮した時の感動を
君のフルートが奏でる「祖谷の粉挽歌」の透明な音色を
未明童話の「赤いローソクと人魚」の幻想の世界を
市高の空に向かって 高らかに歌いあげる君のテノールの響きを
そして 君が作曲した市高賛歌をみんなで大合唱したあの感激を

君は愛するだろう 限りなく
市高を 市高の空を 
土を 川を 海を 山を
君は見ただろう 音楽室の窓から
春は葦芽が萌え
空にひばりが歌うのを
海風の吹く夏は 
海が星屑を散りばめたように金色に輝き
紅葉の秋は 
真紅の夕日が紫紺色の眉山の山陰に急速に落ちてゆくのを
西風のうなる冬は 
吉野川が白い牙をむいたように波立つのを
君はこの春 桜吹雪の中 市高を去ってゆく
僕たちは忘れないだろう いつまでも君を
君の若い命の燃焼を 愛する市高の定演を
僕たちは贈ろう 温かい拍手を
青春の足跡を残して去ってゆく君に
感謝と激励の拍手を
そして 君の心に捧げよう 花を
市高の花 太陽の花
ありがとう 川人先生
ごくろうさん 川人先生
さようなら さようなら 川人先生
僕たちの愛する川人昭夫先生

川人先生賛歌

湯浅真人
 1998年12月9日、川人昭夫先生の告別式の日、会場は1000人を越える人であふれました。教育界から、県内すべての音楽界から、そして全国から大勢の教え子が駆けつけました。式場には、川人先生指揮市高オーケストラによるチャイコフスキーの交響曲第5番が流れていました。いよいよ御出棺のとき、城北賛歌や生演奏の市高賛歌に、皆が声を上げて泣きました。先生のお人柄をしのばせる盛大かつ暖かい告別式でした。  川人昭夫先生は、いつも生徒と共に泣き、笑い、遊び、そして音楽を楽しんでいました。川人先生は全身で音楽の喜びを教えてくれました。川人先生の練習にはいつも笑いが絶えませんでした。そしてその中で、「楽しむ音楽」「追求する音楽」の本質を教えてくれたのです。川人先生の教えを受けた人は皆、音楽が大好きです。  このCDには、徳島市立高校、阿波高校、城北高校での、川人先生指揮による演奏が収められています。このCDが単なるメモリアルにとどまらず、音楽的に第一線の名演ぞろいであることがおわかりただけると思います。徳島県にこれほどの功績を残した音楽教育者がいた事を、私たちは誇りに思い、このCDを宝としたいと思います。